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間質性肺炎とは 症状 病気の原因 検査と診断 病気の分類と概要 治療方法 肺移植について

病気の分類と概要

間質性肺炎の種類により、治療方法、病気の今後の見通しなどが異なるため、その分類は非常に重要です。

特発性間質性肺炎については、その原因について遺伝因子面、ウィルス面等からの研究が進められていますが、その原因の特定および根治療法の開発にはいたっていません。したがって、現状は病理学(主に生検により採取された肺組織の検査)と臨床像(臨床所見、治療に対する反応性、病気の経過)とを比較対比することにより、この病理像(組織検査の結果による病理組織学的分類)には、この治療または臨床対応が好ましいという形で、疾病の分類が行われてきています。

しかしながら、患者の様態からすべての人に肺生検を行うことは困難であるため、肺生検が行えない場合は、病気の状態、進行速度、レントゲン、CT所見、気管支鏡検査、BAL等の結果から疾病の種類の推測が行われます。

ここでは、基本的にKatzenstein ALとMyers JLの文献(注1)を基づき、疾病の種類毎に臨床経過、治療(ステロイド薬への反応)、経過、予後(病気の今後の見通し)等について説明します。

なお、以下では、慢性とは年単位で、亜急性とは月単位で、急性とは週単位でその病状が進行していくものを指しています。

@ UIP (通常型間質性肺炎、Usual Interstitial Pneumonia)

  多くの病理学者は、特発性肺線維症(IPF;Ideopathic Pulmonary Fibrosis)とUIPとを同じ意味で使用しています。厳密にはIPFの方が広い意味をもっています。

臨床経過 慢性。風邪等により急性憎悪(安定していた病状が急速に悪化すること)する場合がある。
ステロイドへの反応 悪い
経過、予後 きわめて悪い。完全に回復することはなく、病状を悪化させないことに注意する。通常は、徐々に肺の線維化、肺の縮小が起きてゆき、呼吸が困難になっていく。死亡原因は、呼吸不全(約40%)、心筋症(約30%)、肺ガン(約10%)となっている。
5年後生存率 32% 平均余命5−6年
発症年齢 平均57歳、主に中年に発症。
子供の発症有無 無し
その他

A AIP (急性間質性肺炎、Acute Interstitial Pneumonia)

    以前は、Harmman-Rich症候群と呼ばれていました。

臨床経過 急性、
ステロイドへの反応 悪い
経過、予後 極めて悪い。ただし、まれに完全回復する場合がある。始め高熱があり、風邪の症状が出て急速に呼吸困難が進む場合が多い。回復する場合は自然回復。
5年後生存率 38% 平均余命1−2ヶ月
発症年齢 平均年齢49歳、発症年齢に偏りがなく、7歳から77歳の人での発症が報告されている。
子供の発症有無 まれに有り(Rare)
その他  

B NSIP (分類不能な間質性肺炎、Non-Specific Interstitial Pneumonia)

     NSIPはさらにI群、II群、III群に細分化されています。I群は線維化なし、II群は線維化有り、蜂巣化無し、III群は線維化、蜂巣化ともに有るタイプです。

臨床経過 亜急性〜慢性
ステロイドへの反応 良好 注2)
経過、予後 一般的に良いが、まれに不良あり。病状の改善、完全回復あり。予後はBOOPと比較すると良くない。 注2)
5年後生存率 89%
発症年齢 平均年齢49歳、主に中年に発症。
子供の発症有無 たまに有り(Occasionaly、Rareより多い)
その他 線維化が起こっていないI群では死亡例がないという報告がある。注1)
24人のNSIP患者で発症後4年から7年で3人の死亡者がでて、その3人ともがII群であったとの報告がある。注3)

D BOOP (閉塞性細気管支炎、Bronchiolitis Obliterans Organizing Pneumonia)

以前はBIPともよばれていました。下記Katzenstein & Mayersの文献ではIPFに分類されていませんが、私自身の症状に関連するので入れました。

臨床経過 亜急性
ステロイドへの反応 良好 注2)
経過、予後 良好。病状の改善、完全回復あり。予後は上記NSIPよりいい。
5年後生存率 資料無し
発症年齢 データ無し
子供の発症有無 データ無し
その他

E DIP (剥離性間質性肺炎、Desquamative Interstitial Pneumonia)

臨床経過 慢性
ステロイドへの反応 良好
経過、予後 良好。病状の改善、完全回復あり。
5年後生存率 73% 平均余命 12年
発症年齢 データなし
子供の発症有無 まれに有り
その他 喫煙と強い相関性がある。注1)中の参考文献の1つでは90%、あと1つには100%に喫煙経験ありと報告されている。

F RBILD (呼吸細気管支のところの間質性肺炎、Respiratory Bronchiolitis-associated Interstitial Lung Disease)

臨床経過 慢性
ステロイドへの反応 良い
経過、予後 良好。病状の改善、完全回復あり。
5年後生存率 100%
発症年齢 平均年齢36歳
子供の発症有無 なし
その他 喫煙と強い相関性がある。

 

注1) 上記のテーブル中のデータは、基本的に下記のKatzenstein Al, Myers JLの文献を参考にしました。

Katzenstein Al, Myers JL (1998) Idiopathic Pulmonary Fibrosis Clinical Relevance of Pathologic Classification. Am J Respir Crit Care Med 157, 1301-1315 [Link to full text]

また、日本の資料では以下のものが参考になります。

京都大学大学院医学研究科呼吸器病態学 長井苑子
「間質性肺炎の分類と問題点」 中山書店発行 Molecular Medicine Vol.36 No.1, 1999 P14
   

注2) ステロイド薬への反応については以下の日本の文献が参考になります。

日本医科大学病理学第一教室 福田 悠
「治る間質性肺炎治らない間質性肺炎」
  J Nippon Med Sch 2001; 68 (5)

    http://www.nms.ac.jp/jnms/2001/06805456j.pdf

注3) NSIPの症例についての記述があります。ただし、インターネットで閲覧できるのは概要のみです。

Internal Medicine Vol.36 No.5 May 2002
Clinical Features of Three Fatal Cases of Non-specific Interstitial Pneumonia
By Jiro Fujita, Ichiro Yamadori, Shuji Bandoh, Kohichi Mizobuchi, Ichizo Suemitsu, Yukinobu Nakamura, Yuji Ohtsuki and Jiro Takahara

http://www.naika.or.jp/im/im39/ab39_5/c390507.html

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