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間質性肺炎とは 症状 病気の原因 検査と診断 病気の分類と概要 治療方法 肺移植について

診断と検査

患者の呼吸状況等から間質性肺炎の疑いがある場合、通常、病名を確定するため血液検査、胸部レントゲン、呼吸機能テスト(PFT、Pulmonary Function Tests)、気管支鏡検査および開胸肺生検または胸腔鏡下肺生検(VATS, Video-Assisted Thorascopic lung biopsies)が行われます。また、その他の試験として運動検査、心電図等も実施される場合があります。

聴診

間質性肺炎では胸部背面下部においてベルクロ・ラ音(捻髪音、Fine crackleともいう)が聴取できます。

「ベルクロ・ラ音」とは?
ベルクロ(Velcro)とはマジックテープを製造する会社の名前からきています。マジックテープをはずすときバリバリと音がしますよね。この音に似た肺雑音を「ベルクロ・ラ音」と呼んでいます。

血液検査(Updated)

間質性肺炎の活動性を反映する血液検査の指標として、血清マーカー「KL-6」が優れていることが報告されており、一般的に500U/mlが活動期、非活動期の判断基準と言われています。KL-6は副腎皮質ホルモンの大量療法(ステロイドパルス療法)前後の治療効果の判定や、安定慢性期の患者さんの病勢評価にも用いることができます。

しかしながら、文献によって間質性肺炎が活動期にあるのか非活動期にあるのかの判断値が異なっています。例えば下記1)、2)の文献では以下のようになっています。

文献

1) 2)
活動期 1497±560 U/ml (n=36) 2,546±1,703 U/ml (n=18)
非活動期  441±276 U/ml (n=15) 795±385 U/ml (n=11)
正常人 309±157 U/ml (n=67) NA
活動、非活動期判断基準 500-700 U/ml 1500 U/ml
Sensitivity, Selectivity注1) 両方とも90%以上 81.8%、94.4%

注1) Sensitivityは活動期のものを活動期と判断する確率、Selectivityは非活動期のものを非活動期と判断する確率。

CRPは体内で炎症反応が出ているかを見るもので、間質性肺炎が活動期にあるときはプラスに出るようです。また、SP-ASP-D(それぞれ、肺サーファクタントプロテインA、D)も間質性肺炎と関連するマーカです。ただし、KL-6と比較すると利用されるケースは少ないように思います。

その他の間質性肺炎の活動性を反映するマーカーとして、従来、乳酸デヒドロナーゼ(LDH)上昇−活動性の指標になる赤血球沈降速度亢進などが用いられてきましたが、これらは疾患に特異的でなく、また必ずしも病勢と一緒に増減するものではありませんでした。

血液検査は、リウマチ因子陽性や抗核抗体など、間質性肺炎の原因となるその他の病気が存在するか否かの確認にも有用です。

1) J Kobayashi, S Kitamura, KL-6: A Serum Marker for Interstitial Pneumonia
   CGEST/108/2/AUGUST, 1995 P311-315

2) Totani Y, Demura Y et al, The usefulness of serum KL-6 levels for the diagnosis of disease activity in idiopathic interstitial pneumonia
    Nihon Kokyuki Gakkai Zasshi 2000 Jun;38(6):437-41


レントゲン

通常、まず胸部レントゲンが撮られます。X線は正常部分と比較して炎症あるは線維化した部位は透りにくいため、その部分はレントゲン写真において白っぽく写ります。間質性肺炎の患者に診られる最も一般的な異常は、小さな節を伴う網状の線で、これらは一般的に肺の下部において顕著に見られます。また、肺の容量も通常減少しています。しかし、下記の理由から胸部レントゲンだけで間質性肺炎を確定するのは困難で、通常、CT(Computed axial Tomography)による検査も行われます。

1)10%近い間質性肺炎患者の胸部レントゲンは正常の胸部レントゲンと同様であること。
2)胸部レントゲンの異常所見だけでは間質性肺炎特有と診断することが困難で、その影像は肺炎や他の多くの肺疾患と類似しており、約30%の医者は同じレントゲン写真でも間質性肺炎とは診断しないこと。
3)胸部レントゲンの変化は、病気の実際の進行度合いと必ずしも相関していないこと。

Chest X-Ray

間質性肺炎患者の胸部レントゲン写真、肺上部が正常で、下部の白い曇りの部分が異常所見を示している。

CTおよびHRCT

CTでは、患者は、大きなリングの中をスライドするテーブルの上に横たわり診断を受けます。リングの直径は数十センチで、胸部のCTを受ける場合は患者の頭部はリングの向こう側にある場合もあります。X線を放射する機械がリングの中でテーブル上の患者の周囲を高速で回転し、さまざまな角度から写真をとっていきます。そのため、写真の上部と下部でずれが発生しないよう、患者は1回につき10秒程度のあいだ呼吸を止めなければなりません。1回の検査でこれを数度行うため数分の時間がかかります。種々の角度から撮られた写真は、その後コンピュータで処理され、数cm(通常のCT)あるいは数mm間隔(高精度CT、HRCT; High Resolution CT)の胸部断層写真が出来上がります。

CTの装置構成図

CTスキャン

 

間質性肺炎の診断においては、間質性肺炎の症状が起こっている肺下部をより詳細にみるため通常HRCTによる撮影が行われます。HRCTは、その名前のとおり通常のCTと比べ写真自体も鮮明で、その分解能は約0.5mmです。CTにおいて、他の肺疾患と区別して間質性肺炎の診断を下すためにはこの程度の分解能が必要となります。



間質性肺炎におけるCTまたはHRCTの所見は、胸部レントゲンと同じで網状の線です。これらの網状の線は、通常肺下部の外側に多く見られます。これらの変化は、正常な肺の部位の中に入り混じるような形で異常な部位が発生している形で見られ、濃い霧がかかったようなところは、その所見から”すりガラス(Ground glass)”状の所見と言われます。これらの異常部位は間質において炎症がおきていることを示しており、この炎症の量、すなわち”すりガラス”状の部位の量は、今後の病気の経過に対する見通しや治療への反応を診断するにあったって重要です。また、蜂巣化(Honeycombing)がおこっているところは病気が進行しているところです。

肺機能試験(Pulmonary Function Test : PFT)

肺機能試験は、肺がどの程度機能ているかを測定する試験です。肺活量(VCまたは“スローVC”)は,最大吸気努力後にゆっくりと呼出したときの最大呼気量です。簡単に検査でき,最も価値ある肺機能検査値の1つです。なお、18歳以上の成人の推測正常値は次の公式によって得られます(肺活量は身長、性別、年齢、姿勢などによって違います)。

 男性={27.63−(0.112×年齢)}×身長
 女性={21.78−(0.101×年齢)}×身長

FEV1(Forced Expiratory Volume for 1 second、一秒量)とFVC(Forced Vital Capacity、努力性肺活量)は、FEV1が,最大吸気後,最初の1秒間で努力呼出した空気の量で、FVCは,最大努力によって排出された空気の総容積です。通常FEV1はVCの75%を超え、この値は,絶対値と肺活量に対するパーセンテージ(FEV1%FVC)の双方で記録されます。

DLCO(Diffusing Capacity of Lung for Carbon Monoxide : 肺一酸化炭素拡散能)は,1回の呼吸で判定できます。患者は低濃度既知量の一酸化炭素(CO)を吸気し,10秒間息を止めた後に呼出します。これにより呼吸の間に吸収されたCO量は,肺胞ガスの標本(つまり,終末呼気ガス)に含まれるCOを分析することにより計算され,mL/分/mmHg単位で表されます。間質に炎症および線維化がある場合は、一酸化炭素の血液中への拡散が妨げられます。

間質性線維症の状態が悪化するにつれてVC、FEV1、FVC、FEV1%FVCおよびDLCOの値が減少するので,そのような病態の経過と治療に対する反応を追跡するのに有効です。

(経験談)
入院途中のPFTの検査では、数値を少しでも上げたいと頑張るのが患者の心理(わたしだけ?)、しかし、頑張ったせいかいつもPETのあとでは微熱がでました。でも、この微熱は3−4日すると下がるので心配なさそうです。


気管支鏡検査および気管支肺胞洗浄(BAL : Bronchoalveolar Lavage ) 


患者の胸部レントゲン、CT、肺機能試験等で間質性肺炎の異常所見が見られた場合は、確定診断を行うため通常はバイオプシーすなわち小さな肺組織のサンプルが必要になります。これは気管支鏡とよばれる柔軟な光ファイバーを患者の肺の中に入れることにより行われます。患者は意識がある状態で本検査を受けられます。まず、患者は咳と吐き気がなくなるまで口と喉に局部麻酔が掛けられた後、検査用の光ファイバーが口から肺の中に入れられます。それから生検鉗子(a biopsy forceps)と呼ばれる小さな装置が光ファイバーに沿って肺の中に挿入され、数個の耳掻きのの先のようなサイズのバイオプシーが取得されます。これらのバイオプシーは処理され顕微鏡で検査されます。




BALは、気管支鏡検査の時に一緒に行うことができ、生理食塩水を肺の部分に注入し、直ちに吸引し取り出します。この液体には間質性肺炎により炎症が起こっている肺胞にあった細胞が含まれています。気管支鏡検査によるバイオプシーのサンプルがピンの先ほどの大きさであり、開胸肺生検および胸腔鏡下肺生検でのバイオプシーのサンプルも2-3cmの大きさであるのに対して、BALでは、人間の拳ほどの大きさの肺のエリアから組織に関わるサンプルを液体と一緒に取り出すことが出来ます。しかし、BALでは、生検と異なり病気の種別の確定診断は出来ません。 


間質性肺炎の診断が下された場合、BALにより、現在、病気が活動期(肺の線維化が急速に進む危険が高い時期)であるのか非活動期(病状が落ち着いており、さらなる肺の線維化がおこる可能性が低い時期)にあるのかを確かめることができます。間質性肺炎の病勢は、強くなったり弱くなったりするので、非活動期には治療は有効ではなく、治療すると副作用のみ現れることになりかねません。 

肺の大きなエリアからサンプルをとることができるという点でBALは非常に有用な情報が得られるのに加えて、最近、BALによって得られた細胞の数や種類を元に間質性肺炎の診断や治療方法に関する判断をするようにもなってきています。

(経験談)
胃カメラを飲んだ方には、それより少し苦しい程度だと考えていただくと良いと思います。私の場合はBALで入れた生理食塩水が気管の方に逆流してきたせいか、咳がでて咽て苦しかったです。 

開胸肺生検および胸腔鏡下肺生検 

気管支鏡検査で得たバイオプシーによる確定診断が困難な場合は、医者から開胸肺生検および胸腔鏡下肺生検の実施を勧められる場合があります。これらの検査は、入院して全身麻酔により行われます。開胸肺生検の場合は、胸部外科医が2つの肋骨の間を10cm程度切開し2-3cm幅でバイオプシーを採取します。また、胸腔鏡下肺生検の場合は、胸腔鏡を使用します。この方法では胸壁のごく小さな切開を通して内視鏡を胸の中に差し込み、それによって肺を肉眼で見ながら、別に2個所ていど小さく切開したところからバイオプシーを採取します。

なお、この程度の大きさの肺組織をとったとしても全体的な肺の機能には影響がありません。術後の回復は、切開部分の大きさ等のちがいから胸腔鏡下肺生検の方が開胸肺生検と比較すると早く、問題がない場合は胸腔鏡下肺生検が行われます。下記は胸腔鏡下肺生検の手術時のイメージ図です。



一般的には、上記2つの検査は比較的安全な手術ですが、入院、全身麻酔が必要で気管支鏡検査にくらべると大きな苦痛を伴います。また、すでに重症、高齢(70歳以上)、肺機能があまり良くない人、心臓をはじめ他の臓器に疾患をお持ちの人には、これらの検査は適用が困難です。このような場合には、身体所見、気管支鏡、胸部CT、臨床経過などの結果から疾病の種類を推定することになります。なお、肺生検の必要性についての検討が以下の文献でなされています。

Hunninghake GW, Zimmerman MB, Schwartz DA et al., Utility of a lung biopsy for the diagnosis of idiopathic pulmonary fibrosis, Am J Respir Crit Care Med 2001 Jul 15;164(2):193-6


(経験談)
私の場合は、胸腔鏡下肺生検により3箇所を2〜3cmほどの大きさで切開し行われました。手術は朝9時30分ごろから始まり2時間程度(当初30分で終わるといわれていたのですが?)で無事終了し、麻酔から醒めて気が付くと点滴の細いチューブが左手に、右脇腹に太目のチューブ(手術後に体内からでる体液を排出する目的のもの?)がついていました。右脇腹のチューブは機械につながれていて、歩きはじめると紐につながれたポチ(犬)になった気分です。手術日当日から翌朝までが看護師さんの詰め所横の経過観察室というところにはいって集中的に看護していただけました。動けないし、大きな声は出せないので、看護師さんをよぶブザーは手放せませんでした。
翌朝になって、師長さんが入ってきて「今日から歩いてもらいます。」よとの一言、自分の体調を考えると冗談でしょうとおもったが本気の様子、でもやってみたら、最初は体を起こすのも大変だったけれど、歩けたし、この方が回復が早いようです。

病理検査

気管支鏡検査、開胸肺生検および胸腔鏡下肺生検で取得されたバイオプシーにより、間質性肺炎の種別を特定するため病理検査が行われます。間質性肺炎にも多くの種類があり、それぞれによって治療方法や病気の今後の見通しが大きく異なるため、そのタイプを特定することは重要です。下記に示された4種類写真は顕微鏡下での所見が大きく異なることからも、バイオプシーの有効性が判ります。下段の写真は、間質性肺炎のタイプごとその所見が示されています。

肺全体の断面図

 

UIPの顕微鏡写真である。場所ごとに異なる所見を示しており、正常部分が右側と下部の中心にある。矢印の先は線維化または炎症が起こっている部分を示している。 NSIPの顕微鏡写真である。肺壁(Alveolar walls)が拡散し締まりがなくなっており、かつ、その幅が均一に太くなっていることが判る。
DIPの顕微鏡写真である。肺胞壁の幅が均一に太くなっているとともに肺胞に炎症を起こした細胞がつまっている。 AIPの顕微鏡写真である。炎症を起こした細胞により細胞壁の幅が均一かつ異常に太くなっていることが判る。
 

 

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